欧米ではここ数年、コーヒーから離れ、そのかわりに抹茶を選ぶ人が増えているという。実際、カフェでも「Matcha」と書かれたメニューをよく見かけるようになってきている。
抹茶は緑茶の一種だが、他のお茶のように茶葉をお湯に浸すのではなく、茶葉を細かく砕いた粉末を使用するのが特徴。高濃度の栄養素が含まれ、より高い栄養効果を期待できるとされている。
その歴史は12世紀までさかのぼり、8世紀以上にわたる日本のお茶文化を語るうえで欠かせない存在だ。米国登録栄養士・ニューヨーク州認定栄養士の宮下麻子さんは、「日本の僧侶である明菴栄西が、緑茶を求めて中国に渡ったことは有名な話です。座禅を組む前に抹茶を飲むと集中力が持続することに気付いた彼が、日本に抹茶を広めました」と語る。
そこで、5月21日の「国際お茶の日」を前に、体にうれしい抹茶の効能や、自宅でおいしい抹茶を楽しむコツをご紹介。これを知れば、あなたも抹茶派にシフトしたくなるかも?
1. 抗酸化物質やビタミンがたっぷり
緑茶には、抗酸化物質ポリフェノールの一種として知られるカテキンが含まれている。「粉末の抹茶には、この強力な抗酸化物質が豊富に含まれており、細胞のダメージを減らし、慢性疾患の予防に役立ちます」と述べるのは、登録栄養士のジェナ・ゴーハムさん。
さらに抹茶には、ビタミンA、B、C、E、Kなど、さまざまなビタミンが含まれていると宮下さんは説明する。
2. 肌にツヤを与える
もし肌トラブルを抱えているなら、1週間、コーヒーのかわりに抹茶を試してほしいと宮下さんは提案している。
2017年に栄養専門誌『Nutrients』に掲載された研究によると、抹茶に含まれるビタミンCを摂取することで、コラーゲンの生成が促されるという。また、ビタミンBには健康な皮膚細胞のターンオーバーを促進する働きがあることが、医療情報誌『Advances in Skin & Wound Care』の研究で明らかになっている。
3. 他のお茶よりもエネルギーを得られる
ゴーハムさんによれば、抹茶には、煎じて飲むタイプの他のお茶よりも多くのカフェインが含まれているという(紅茶1杯あたり47ミリグラム、緑茶1杯あたり28ミリグラムだが、抹茶にはなんと70ミリグラムも含まれている)。
これには、1杯あたり約96ミリグラム(種類によってカフェインの量は異なる)のカフェインを含むコーヒーと同等か、もしくはそれよりわずかに低い程度のエネルギー効果があるのだとか。
4. コーヒーよりも神経過敏になりにくい
「抹茶には、ストレス軽減の効果があるとされるアミノ酸の一種L-テアニンが含まれています」とゴーハムさん。2016年のある研究では、L-テアニンを25ミリグラム程度含む緑茶のような飲料がストレスを軽減し、脳内の神経伝達物質γ-アミノ酪酸(ガンマ-アミノらくさん=GABA)の増加に効果的であることがわかったという。
「抹茶を飲むと緩やかに覚醒でき、倦怠感や眠気、集中力の低下を引き起こすとされる“カフェイン・クラッシュ”が起こらないと言われていますが、これはL-テアニンが関係しているのかもしれません」とゴーハムさんは述べている。
5. 生産性がアップする
2017年に『Food Research International』に掲載された研究では、抹茶を飲んだ人は1時間後に注意力と処理速度が微増したという。これは、L-テアニンや、エネルギーを高める可能性のあるポリフェノールの一種エピガロカテキンガレート(以下EGCG)、カフェインによるものだとみられている。
忙しいときには、カフェで抹茶を使ったドリンクをチョイスすると、その日の自分へのいい投資になるかもしれない。
6. がん予防に役立つかもしれない
抹茶の粉末自体の抗がん作用を証明する特別な研究はないが、長年にわたり科学者たちは緑茶というカテゴリーについて研究してきた。
古い研究では、緑茶に含まれるカテキンのEGCGが大腸がんの予防に役立つとされている。また別の研究では、緑茶が抗がん剤との相乗効果でがん予防に有効だと示されており、これもEGCGによるものだという。
7. コレステロール値を健康的なレベルで維持する
科学的に正確な結論は出ていないが、2016年の研究レビューによれば、緑茶に含まれるEGCGを定期的に摂取することで、LDLコレステロール(一般的に悪玉コレステロールと呼ばれる)を大幅に減らせることがわかったという。
LDLコレステロールは動脈に脂肪酸を蓄積させ、心臓発作や脳卒中のリスクを高めると説明する専門家もいる。
8. 骨を強くする
年齢を重ねていくうえで、骨の強度を高めることは、体力や運動能力を維持するためには重要なこと。緑茶に含まれるポリフェノールは、炎症を引き起こす骨への酸化ストレスを減らすことで、骨密度を高めると考えられており、その結果、骨粗しょう症の発症リスクを下げることができる、といくつかの研究で報告されている。
9. コーヒーや他の茶よりも満足感を得やすい
牛乳や代替ミルク(アーモンドミルクやオーツミルクなど)を混ぜて飲むことも多い抹茶。そうすると、ミルクのカロリーがプラスされる分、一般的なエスプレッソベースのラテと同様に満腹感を得やすくなる。
しかし、「コーヒーショップやレストランでは、抹茶の香りとのバランスを取るために、砂糖や粉ミルクを混ぜている店もあるようで、ストレートの抹茶よりもヘルシーさに欠けるかもしれません」とゴーハムさんは言う。
気になる場合は、純粋な抹茶パウダーと既製のミックスパウダーのどちらを使うのか、後者の場合は何が入っているのか、バリスタに聞いてみてもいいかもしれない。ゴーハムさんは、「代替ミルクにも甘味料が使われている場合があるので、摂取量には注意が必要です」ともアドバイスしている。
10. 天然の着色料としても有用
いくつかの古い研究では、人工的な着色料(お菓子作りに使うこともあるもの)の発がん性について示唆されている。だからこそ、自然なもので着色できるならばそれを利用しない手はないだろう。
抹茶ブランド「BeMatcha」によると、高品質の抹茶は、クロロフィル(葉緑素)をたっぷり生成させるために、太陽の下ではなく日陰で栽培するという。このクロロフィルが抹茶の鮮やかな緑色のもとであり、食品への着色にも役立ってくれる。
料理やお菓子、カクテルなど、抹茶パウダーを少し加えるだけで美しいグリーンに仕上げることができる(しかも栄養もプラスできる)ので、週末のお菓子作りやホームパーティなどでぜひ活用してみてはいかが?
11. 脳を保護する
『Nutrients』誌に掲載された2020年の研究によると、毎日抹茶を飲むことで認知機能の低下を遅らせることができるかもしれないという。これは、抹茶に含まれるビタミンKやルテインが、注意力や記憶力などの認知機能の向上に関連があるとされているため。
12. 感染症対策にも活躍する可能性がある
まだ初期段階だが、2021年に行われたある細胞研究では、抹茶には肺炎を引き起こす細菌である肺炎球菌を死滅させる可能性があることが判明している。これも、ここに繰り返し登場するカテキンのおかげであると研究者は考えている。
自宅で抹茶をいただこう
ご存じのとおり、わざわざカフェに行かずとも、自宅で手軽に抹茶を楽しむ方法もある。
「伝統的に、日本人は茶杓と茶せんを使って抹茶を点てます。持っていない場合は、スプーンでも大丈夫です」と宮下さん。その方法を以下でご紹介。
1) 2~3オンス(約59〜88ml)の水を70~80度まで加熱する。温度計がない場合は、気泡の大きさを見て判断し、中程度の大きさになったことを確認しよう。
2) マグカップに小さじ半分〜1杯の抹茶を入れ、1のお湯を注ぐ。
3) ダマが残らないようスプーンでしっかりと混ぜれば完成。茶せんがあれば、泡が立つようにしっかりと混ぜること。もちろん水やミルクで割ってもOK。
※この記事は、海外のサイトで掲載されたものの翻訳版です。データや研究結果はすべてオリジナル記事によるものです。
Translation: Ai Ono From Women's Health US