あなたは大丈夫? 産後不安の兆候と助けの求め方

ライターが自身の経験を語り、その分野の専門家たちに話を聞いた。

happy new mother holds her infant baby in her arms
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最近の統計によると、イギリス人女性の15%が産後不安を経験している。これには、産後のホルモンバランスの崩れ、授乳トラブル、極度の睡眠不足、産後の体の回復など、多くの要因が影響しているとのこと。

ママになると、友人や周りからの親切が大きな助けとなる。この記事の著者でのあるマルガリータは帝王切開後、コロナの規制により夫とも一緒にいることを許されず、涙を流しながら一人病室で過ごしていた。小児科医は私の横に座り、内緒で夫と赤ちゃんをガラス越しに会わせてくれ、温かい紅茶を持ってきてくれた。

「簡単じゃないでしょう? ママになることは」彼女はこう言った。「おなかを切られ、あざができ、痛みに耐えながら、新しい人間をこの世界に生み出した。自分に親切でいるのよ。ゆっくりでいいんだから。助けが必要なときは、いつでも連絡してくださいね」。マルガリータはただただうなずき、感謝の気持ちで涙があふれていた。

さらに産後の人生は、ホルモンバランスが崩れ、睡眠不足に悩まされ、心配や不安が募り、まさに感情のジェットコースターに乗っているかのようだった。少しでも不安を和らげるために、そして子供のためにできる限りベストな母親になるためには、子供だけでなく、自分自身の面倒を見る必要があった。この記事では、マルガリータが母親になって最初の365日間をうまく乗り切るために得た情報やテクニック、ツールをすべてアメリカ版ウィメンズヘルスに紹介している。少しでもあなたの役に立てれば幸せ。もし今、産後不安や産後うつ病に苦しんでいるなら、必ず専門家に助けを求めて。

産後不安とは?

「産後不安を抱えると、女性は常に動揺したり、なにかにつけて心配しているように感じられるでしょう。どんなに頑張っても心を鎮めることができず、じっと座ることも眠ることも難しくなります」と説明するのは、総合診療医で不妊専門医のハナ・パテル博士。

「産後うつ病や産後不安を抱える女性は多く、この両方が混在することも珍しくありません」。ところで、産後不安と通常の不安の違いってあるの? 以下のいずれかの症状が現れていれば、産後不安の可能性が高い。

・赤ちゃんが危険に晒されていないか過剰に心配してしまう

・赤ちゃんになにかあったらと悪い想像をしてしまう

・赤ちゃんの安全における不安が自分の日常生活に支障をきたしている

・パニック発作が繰り返し起こる

パテル博士いわく、不安が精神的健康に悪影響を及ぼしていたり、過度な不安を抱えている場合は、すぐに総合診療医や訪問看護師に助けを求めるべき。

産後不安と産後うつ病の違いとは?

anxiety mother struggle with postpartum depression
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「産後うつ病と産後不安の決定的な違いは症状にあります」と説明するのは、子育てと睡眠を専門とする小児看護師のハンナ・ラブ。「産後うつ病になると、気分が沈み、泣いたり涙ぐむことが増え、やる気が出なかったり、悲しげな表情をしていたり、以前関心があったことに対しても興味が湧かなくなります」

「産後うつ病とは対照的に、産後不安は、産後に過度な不安を抱くようになります。深刻な場合は、不安が子育てや母親としての日常生活に支障をきたし始めたとき。すぐに専門家に助けを求める必要があります」

「私は15年以上、育児や睡眠のサポートを通して多くの家族を支えてきましたが、連絡をくれる女性たちはみな、不安を感じているんです。これが、私に連絡をくれる最大の理由でした。睡眠に対する不安、赤ちゃんの寝付きに対する不安、赤ちゃんの睡眠時間に対する不安、赤ちゃんが必要なカロリーを摂取できているか、離乳は順調かどうか、赤ちゃんが眠っていてもすぐに起きてしまうのではないか、目が覚めなかったらどうしよう、このような不安のスイッチが永遠に切れなくなります。こういったことをある程度把握しようとするのは母親にとって正常なことですが、不安が日常的な作業に影響を与えたり、精神的に打ちひしがれそうになる場合は、正式な産後不安です」

産後うつ病か産後不安のいずれかで、妄想的な思考や感情が赤ちゃんや自分自身、他人を傷つけてしまうかもしれない。このような危険信号が出ている場合は、直ちに専門家に助けを求めることが重要だとハンナは指摘している。

「まず初めに私がサポートすることは、母親としての予測可能性を高めること。毎日慌ただしいうえ、常に赤ちゃんから目が離せない状態ですので、話を聞いてもらうだけで彼女たちは心が随分と落ち着きます。赤ちゃんは安全で、あなたは母親としての役目を立派に果たしているという事実を知らせ、安心感を得てもらいます。もっとも重要なのは、睡眠に取り組むこと。十分な睡眠とうつ病や不安症には大きな相関関係があります。多くの母親たちが、産後うつ病/産後不安と診断を受けていることが報告されており、彼女と赤ちゃんが睡眠をうまくとれるようになってきた頃には、それらの症状も大体消えているのです。睡眠の重要性に関しては、いくら強調しても足りないくらいですね」とハンナ。

「深刻な場合は、心理療法や認知行動療法(CBT)、そのほかの会話療法、SSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)など薬物療法を紹介されることもありますが、大半は、誰かと話をすること、サポートを得ること、睡眠の改善に取り組むこと、安心感を抱くことで予防できます」

ほかの母親にサポートを求める

mom group helps combat postpartum depression
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「実際に診断を受けてはいませんが、長男が生まれた後、私は産後不安を経験していたと思います」と話すのは、ピラティススタジオ「Centred Mums」の創設者であり骨盤底ピラティス専門家のグレース・リリーホワイト。

「私は自分が望んでいた出産ができませんでした。赤ちゃんが非常に不安定な状態だったのはそれが理由だと思っていたので、“完璧な出産”をしてあげられなかった穴埋めをするために、育児を完璧にこなさなければならないプレッシャーと不安を感じていました。Facebookグループの育児コミュニティーの中にいると、抱っこをしなければ泣き止まない娘を傍に、育児も失敗したと感じていました。娘は一度に90分以上寝ることがなかったので、娘を抱っこし、何時間もロンドンの街を歩き回ることも。まるで別人になったかのようで、彼との関係も難しくなりました。脱臼もしていたため、骨盤底のことも気になっていました。その後、骨盤底の健康が産後のメンタルヘルスに影響することがわかったんです」

「周りにママ友もいなかったので、育児の大変さを共有できる相手がいなかったこともつらかったです。もっと育児を楽しめると思っていたし、彼(現在の夫)もなぜ私がここまで変わってしまったのか理解できずにいました。母親であることを真剣に考えすぎていましたね。全部”正しく”しなきゃと思っていたので、リラックスしたり楽しむことができなかったんです」

「子宮脱と診断されたときも、失敗したと感じました。出産する前から、産前産後の女性たちと関わる仕事をしていたので、そこから得た知識で回避することができたはずなのにと、自分を責めていました。なにもかも失敗しているような気がして…。子宮脱に関しては、女性の健康に詳しい理学療法士に診てもらうことをお勧めします。多少の失禁や体調不良はありましたが、症状はそこまで悪くなかったため、すぐにピラティスで体のリハビリを開始しました」

「娘が8〜9カ月を迎えた頃、ドゥーラ(出産に関するアドバイスやサポートを行う女性)に今まで感じていたことすべてを打ち明けました。彼女は、完璧な出産ができなかったからといって、自分を責める必要なんてないのだと、私が納得できるまで支え続けてくれました。その後は新しい家に引っ越し、気持ちよく新生活のスタートを切ることができたんです。2人目のときは、生後6カ月になった頃からセラピーを受け始めましたが、心の状態が断然違います。その後ピラティススタジオ「Centered Mums」を設立してからは、私が多くのママたちにどれだけのことができるのか、サポートネットワークを持つことがどれほどママたちの役に立てるのかを理解できています。これらの体験はすべて、私の人生に新たな目的を与えてくれ、再び本来の自分に戻れた気がしました」

出産時のトラウマを持つ母親が受けられるサポートとは?

「まず、このような経験をしているのはあなただけじゃないと知ることが大切です。トラウマが与える影響や時期は人それぞれ異なります。自分がどんな気持ちでいるのか、愛する人に詳しく話してみてください。そして、かかりつけ医の予約もとりましょう。電話での相談でも構いません。緊急だと伝えてください」と話すのは、新生児の専門家、ミリー・ポピンズ。

「産後ケアに特化した無料のメンタルヘルスサポートに相談してみるのもいいでしょう。出産時のトラウマの解消を専門とするセラピストに連絡をとり、お金はかかりますが、プライベートセッションを受けるという選択肢もあります」

産後不安で注意すべき兆候とは?

「産後不安は、通常の不安のレベルをはるかに超えています」 とミリー。「まったく落ち着けなくなり、常に思考が止まらないと感じるでしょう。やることリストが尽きず、赤ちゃんが寝ているときでさえも眠れなくなります。授乳や体重、睡眠のことだけでなく、誰に赤ちゃんが触れたり誰が抱っこしているのか、赤ちゃんのことを考えると非常に警戒心が強くなったり用心深くなるのが特徴です」

「産後うつ病も似たような症状が重複して現れることもありますが、母親に気分の落ち込みや無気力感、疲労感などが現れ、現在の状況から逃れる出口がどこにもないように感じて涙が出たり、精神的に参ってしまったように感じられます」

産後不安を抱える母親を支えるために、愛する人にできること

young couple embrace each other with love and careconcept of the valentine day and family day
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「産後不安は深刻なメンタルヘルスの問題であり、母親が自分でコントロールできるものではないことを理解してください。産後不安を抱えた母親の多くは、自分に起きていることや、助けの求め方がわからないことが大半です。また、赤ちゃんと離れる時間を作ってあげることは、母親にとってそれがストレス増加につながることもあるので解決策としてはお勧めできません。その代わり、あなたが母親である彼女をサポートする方法を考えてみてください。そうすれば、彼女は赤ちゃんのお世話に専念することができます。あるいは、かかりつけ医や助産師、慈善ヘルプライン、あるいは産後の精神疾患の経験を持つセラピストからアドバイスを受けてみることもお勧めします」とミリー。

産後不安/うつ病を克服するうえで役立つこと

運動

大手フィットネスブランド「LES MILLS」が、カナダのフレイザーバレー大学と共同で行った研究によると、出産後4〜6週間から徐々に運動を再開する女性は、まったく運動をしない産後の女性に比べて産後うつ病や不安の発症率が低いことが明らかになっている。

この実験では、産後の母親たちが8週間にわたり、有酸素運動と筋力トレーニング、体幹トレーニングを組み合わせたLES MILLS独自のトレーニングに隔週で参加した。

各セッション後、参加者は不安が大幅に減少したと報告しており、ワークアウト後に感じる不安は平均55%も減少していることがわかった。8週間が経過した頃には、普段から不安のレベルが平均42%も低下し、同時にうつ病の症状やストレスの改善もみられていた。さらに母親たちは、運動へのモチベーションが高まり、達成感や絆を感じられ、運動を通して基本的心理欲求を満たせることを実感できたと報告している。

▶︎自分のペースでゆっくり始める

「ウォーキングは、6週間で運動の耐性を改善する方法として優れています。自分にとって心地よい範囲で始めましょう。心地よい範囲もまた人それぞれ異なるので、最近出産した人と自分を比べたりすることだけはやめましょう」と話すのは、女性の健康サポートを提供する「Ten Health & Fitness」の責任者で理学療法士のリーン・オブライエン。

「ソーシャルメディアでは、新米ママに向けて矛盾したアドバイスが多く見受けられます。資格を保持している理学療法士か医療従事者に相談してください。とくに尿失禁や便失禁、切迫感がある場合や、外陰部や膣の周辺、骨盤に不快感や重だるさ、痛みがある場合は、骨盤の健康理学療法士に一度診てもらうべきです」。産後の理学療法については、かかりつけ医に尋ねてみて。

▶︎体の声に耳を傾ける

定期的な運動は、産後うつ病や産後不安の発症リスクを減らし、非常に効果的な予防治療でもある。とはいえ、母親になったばかりの女性はとくに疲れ果てている。そんな状態でどうやってアクティブに体を動かせるの?

「多くの研究では、運動が産後うつ病の症状を緩和し、身体的・精神的に女性に有益であることが示されています」と説明するのは、フィットネス専門家のポーラー。「心拍数モニターや活動量計は、身体活動レベルに関するリアルタイムのフィードバックを提供してくれます。これらを活用して進行状況を追跡すると、運動のモチベーションやアドヒアランスを高めることができます」

「負荷の低い運動から始め、自信をつけて全体的な強さを取り戻せたら、徐々に負荷の高いエクササイズに取り組んでいくといいですよ」とポーラー。

「頑張らなきゃ、と自分を奮い立たせなければならない運動をするよりも、心地よさと自信を得られるような運動のオプションを探してみてください」とアドバイスをくれたのは、オリンピックの重量挙げ選手でフィットネスの専門家のヘイリーン・ライアン=コーザー。

外に出る

side view of woman pushing baby stroller while jogging in city
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「赤ちゃんと外に出ることは、家を出る前からすでに登山をした後の気分のように感じるかもしれませんが、産後不安を予防するために取り組むべき大切なことです」と話すのは、ポッドキャスト「Start a ripple …」のホストを務めるインディア・ピアソン。

「日光と新鮮な空気に晒されると、気分が高揚し、心を“今”に向けられるようになります。木々の色や草の匂い、鳥のさえずりなどに意識を向けながら、ベビーカーを押して散歩をするのが私は大好きです。気分を落ち着かせるための素晴らしい方法であり、ずっとなにかを考えたり不安になる思考を止めるのにも効果的です」

イギリスのリヴァプール・ジョン・ムーア大学のイボンヌ・ハリソン博士の研究によると、新鮮な空気と日光に晒された赤ちゃんは、夜もよく眠る傾向にあるという。

マインドフルでいる

「瞑想とマインドフルネスは、産後不安や産後うつ病の症状の改善に役立つことを直に理解しています。私たちのネガティブな感情はすべて、サバイバル脳から生み出されるのです。一般的な不安は基本的に、将来に基づく悩みや考えから発生します」と説明するのは、コーチングプログラム「Ultimate Results Group」の創設者、アニ・ナクヴィ。

「瞑想とマインドフルネスは、サバイバル脳(survival brain)からスライヴ脳(thriving brain)への切り替えに役立ちます。15分座って瞑想をするのが難しいと感じたら、1〜2分でできるこのテクニックを試してみてください。指と親指をこすり合わせ、指先の盛り上がっている部分を触ったり、皮膚の温度を感じたり、ザラついているのか滑らかなのか、こういったことに意識を集中させます。これを1時間毎に1~2分行うだけで、スライヴ脳が充電され、不安や心配や恐れから解放された状態を保つことができるんです」

「赤ちゃんを抱っこして一緒にするのもいいですよ。赤ちゃんの指先や肌の滑らかさ、皮膚の温度に1〜2分意識を向けるだけ。これだけでマインドフルネスの瞬間を1日に何度も取り入れることができます。忘れないでいてほしいのは、ネガティブな思考や感情は必ず去っていくものだということ。そこに大事な集中力や注意力を使わず、代わりに今日自分にできたポジティブなことに目を向けてください。私たちは生存のためのメカニズムとして、否定的な思考をするようにできていますが、私たちはそれ以上の存在であることを思い出してください。あなたは人間的な経験をしているスピリチュアルな存在であり、瞑想は、あなたと真の本質とのつながりを深めてくれます」

空のコップから注げるものはない

産後不安に対処するためのアドバイスをくれるのは、フィットネスクラブ「LDN MUMS FITNESS」のオーナー、サラ・キャンパス。

自分とウェルネスを優先すること。コップが空っぽの状態ではなにも与えられないように、自分を大切にしなければ、結果として活力や気分や不安の問題に苦しむことになる。セルフケアを実践し、いつだって体の声に耳を傾けるように。

カラフルな食材で栄養補給をすること。タンパク質、炭水化物、良質な脂質、果物、野菜をバランスよく食べて。空腹では気分や活力、不安のレベルに影響が出てくるので、ヘルシーなおやつを食べること。砂糖を摂り過ぎてしまうと必然的に血糖値スパイクが起こるので、不安の解消にはならない。少量をこまめに食べるのもグッド。

Noと言うことを学ぶこと。忙しすぎて精神的に押しつぶされないように。ママライフは本当に慌ただしいので、立ち止まり、一息ついて、自分の限界を超えない範囲で行動すること。

今いる場所で、今できることをする

happy mother lifting up baby at home lying on mat
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「自宅でのワークアウトがオススメです。ジムに行く必要も高価な器具をそろえる必要もありません。リビングルームをトレーニングスペースとして使ってください。子供が寝ている間に、20分を目安にするといいですよ」と話すのは、フィットネスコーチのジョー・ウィックス。

「運動すると活力が上がり、心に落ち着きを得られ、ストレスが減ります。子育て自体がストレスになることもありますからね。小さな人間の世話をしていると、自分のニーズを無視してしまいがちですが、自分を大切にすることは忘れてならないことです。HIITワークアウトをしなくても、やさしい運動で徐々に体を鍛えることができます。自分にプレッシャーをかけず、ゆっくりと始めましょう」

「どんな動きもセロトニン値と気分を上げるのに役立ちます。自分の好きなエクササイズをしてください。特定のトレーニングをしなきゃと感じたり、自分にプレッシャーをかける必要は一切ありません。もし睡眠がくとれていないのなら、運動という運動でなくても、体を動かすだけで気分を高められ、不安の軽減にもつながります。ですが、2時間しか寝られなかったという日には、ベッドに戻って睡眠をとるのが一番です」

必須脂肪酸を摂取する

欧米では、産後うつ病の有病率は10〜15%と推定されている。妊娠、または授乳後にオメガ3必須脂肪酸が枯渇してしまい、なおかつ食事で十分に補えていない場合は、心が脆くなりやすいこの時期(産後)にうつ病を発症する確率は2倍に上がると言われている。

胎児の発育期になると、(妊娠第3期ではとくに)、赤ちゃんにオメガ3脂肪酸が必要になる。1日のEPA・DHAの推奨摂取量は300mgだが、発展途上国の女性は平均して100mg未満しか摂取できていない。このことから、女性の中には妊娠中にオメガ3脂肪酸の血中濃度が50%も低下し、出生後26週間が経過しても不足が続いているという。必須脂肪酸の不足は、産後うつ病や不安のリスクを増幅させる恐れがあるので注意しておこう。

さらに産後は、プロゲステロンとエストロゲンのホルモンレベルが劇的に低下するため、気分や意欲に影響を受けやすくなる。同時に、神経伝達物質のセロトニンとドーパミンの分泌量も変化するため、産後の女性は余計に気分や意欲が落ちやすくなってしまう。

オメガ3脂肪酸に関する14件のレビューでは、妊娠中および産後のEPAを豊富に含有するオイルが、うつ病に関連するいくつかの症状を軽減できると結論付けられている。これは、脂身の多い魚や魚介類の摂取量の増加と、産後うつ病の症状の緩和を紐づける研究と一致している。

脂の多い魚は、オメガ3脂肪酸EPAとDHAの両方を豊富に含む供給源。高品質のフィッシュオイルで必須脂肪酸を補えば(おすすめのサプリはWiley's FinestのPrenatal DHA)、出産後のメンタルヘルスと免疫機能をサポートできる。母乳育児を検討している母親にとっては、適切な量のオメガ3脂肪酸を摂取する必要性はさらに高くなる。

産後不安やうつ病に役立つサプリメント

「産後の女性は栄養素が枯渇しています。ホルモンが急激に減少するうえ、妊娠中から授乳中まではとくに多くの栄養が必要になるからです」と話すのは、天然サプリメントブランド「Artah」の創業者であり栄養士のリアン・スティーブンソン。

「妊娠中や授乳中は電解質も不足しやすく、産後6カ月間の睡眠不足は精神的、身体的に大きなストレスを与えます。誰もが産後不安を発症する可能性があり、長期的に不安を感じていると報告する母親たちが多いのも不思議ではありません。サプリメントは、これらの回復をサポートするうえで非常に役に立ちます」

プロバイオティクスは、産後不安へのホリスティックなアプローチとして重要になる。

ビタミンD3は、産後の気分障害の増加にも大きく関連している。とくに、秋から冬にかけて出産した場合は(すべての成人にビタミンD3の服用が推奨されている)、ビタミンD3を服用する重要性がさらに高まるので覚えておこう。

心的外傷後ストレス障害(PTSD)と出産のトラウマ

mother holding and kissing crying baby boy 12 17 months focus on foreground
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ウェルネス起業家のペニー・ウェストンは、自身の体験を共有してくれた。

「私は、心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症しました。これは、外傷性出産後に発症する不安障害の一種です。産後不安の一部でもありますが、私の場合は不安、うつ病、PTSDが混在していました」

「私のPTSDは深刻で、食事も睡眠もとれず、出産したベッドの上に戻ることさえできませんでした。妊娠中はなんの問題もなく、運動も続けていたので、比較的健康な状態を維持できていました。吐き気とつわりの典型的な症状を除けばとくに異常はなかったのですが、出産だけは大変恐ろしいものでした」

「月曜日の夕方に陣痛が始まり、定期的に陣痛が起きていたので入院しましたが、その痛みは非常に耐え難いもので、これ以上耐えられないと思いました。出産できない、そう思いました。今まで生きてきた人生の中で一番ひどい経験でした」

「木曜日に誘発分娩が行われましたが、赤ちゃんが産道にひっかかり、尿から血液が検出されたため、緊急帝王切開で緊急搬送され、分娩開始から5日後の金曜日の朝に生まれました」

「恐ろしくて、ずっと地獄にいるようでしたね。陣痛の苦痛で泣きながら、みんなが私をじろじろと見る中、車椅子で待合室から押し出されたことを今でも覚えています。私にとって、陣痛と出産の一瞬一瞬が非常に酷なものでした」

「1カ月ほど経ちようやく、自分が大きな問題を抱えていることに気付いたんです。よく眠れず、不安がひどかったからです。息子を泣かせてはいけないと、常に見張っていなければいけないと考えていました」

「これが私の主な不安材料で、精神的に押し潰されていたんです。息子が泣き始めたら、すぐに安否を確認しなければ気が収まらず、いつも緊張していて、1日2日は水も飲まなかったほどです。なぜなら、息子を抱き下ろすことができなかったから。体外離脱体験のようでした」

「さらに、陣痛の体験が何度もフラッシュバックして、悪夢にうなされていました。自宅の寝室で陣痛が始まったため、寝室に戻ることすら耐えられず、眠らずに床の上で夜を明かしたこともあります。ですが私にとっての一番の悪夢は出産体験ではなく、息子が寝ている部屋に入ると息子が息をしていないこと、なにか悪いことが起きていることでした」

「陣痛のほとんどを自宅の寝室かバスルームで過ごしていたため、寝室ではまったく眠れず、記憶が鮮明に蘇ってしまうため、何ヶ月も客室や廊下で寝ていました」

「さらに私の産後不安は、育児に関連するすべての答えを見つけるために、オンラインで読んだり検索したりすることに取り憑かれていました。息子がどれだけ寝るべきか、どれだけミルクを飲むべきか......」

苦しみの末に見えてくる光

「総合診療医に診てもらい、外傷性出産と睡眠不足によるPTSDと診断されました。カウンセリングを受けたことでとても救われましたね。最初は直接セラピストに会いに行きましたが、今はオンラインでセッションを受けています。体内感染症に罹り身体の回復がかなり遅れましたが、回復と共に息子を抱っこして毎日散歩に出かけられるようになり、これも私を回復に導いてくれました」

「日頃からよく運動していたので、運動を再開できたときは、通常の自分にやっと戻れた気がしました。新鮮な空気、太陽の光、ビタミンDの組み合わせはなによりの治療です。時間はかかりましたが、トラウマ体験のフラッシュバックや悪夢や不安が徐々に軽減されていき、寝室で眠れるようにもなりました」

産後不安や出産時のトラウマに苦しむ女性たちにアドバイスを贈るなら?

「専門家に助けを求めること。セラピストは、なにを・どうして心配しているのか、あなたの不安を事細かに分析してくれます。それを自分が認識できれば、自分で管理することを始められ、自分にやさしくすることができます」

「それから、友人や家族に話すこと。私は自分の出産体験を人に話しますが、これにより、トラウマ的出産体験を持つ女性がほかにもたくさんいることを知りました。彼女たちの多くはそれを共有しない傾向にあります。このような恐ろしい体験を抱えながら、内に秘めている女性がどれほど多いのか実感したんです。そんな女性を支えるために、私が声を上げなくては、と今では使命のように感じています」

「助けてくれる場所はたくさんあります。苦しみの末には必ず光があることも、私自身が“証明”になれたのではないかと思います。でも、一晩の奇跡を期待したりしないでください。トラウマになるほどの体験をすることは、非常に大きなことです。あれから4年が経ちますが、今でもこの話をするときは気分が悪くなります。生まれて間もない息子の写真もまだ見ることができないので、トラウマが完全に消えたわけではありませんが、かなり乗り越えられています。息子が生まれたこと、息子が与えてくれる喜びすべてに、私はなんて幸運なんだろう。そう心から感じています」

「産後の女性はほぼ、不安に苦しんでいるはずです。これは、まったく正常なことではありますが、これがあなたを支配し始めたならそれは問題です。産後不安は一般的なメンタルヘルスの状態ですが、治療と感情的なサポートが必要になります。自分の気持ちを誰かに話すことが、このうえなく大切です」

※この記事は当初、アメリカ版メンズヘルスから翻訳されました。

※この記事は、イギリス版ウィメンズヘルスから翻訳されました。

Text:MARGARITA MITCHEL POLLOCK Translation : Yukie Kawabata

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