男性の性欲は誤って理解されがち。男性は女性よりも性欲が強いから、セックスのことばかり考えていて、いつでも“その気”と思われている。でも、このような性に対する偏見は時代遅れで、ありとあらゆるジェンダーの人々を傷つける。
ジェンダーに関わらず、性欲が変動するのは普通だし、悪いこととも限らない。性欲の変動が問題になるのは、それがパートナーとの関係や性生活、あなた自身のメンタルヘルスを脅かしているときだけ。
男性の性欲減退は想像以上に“よくある”問題
男性およびペニス所有者の性欲低下は、早漏治療クリニックBetween Us Clinicの臨床心理士ダニエル・シェールがもっとも頻繁に聞く悩み。
事実「男性の5人に1人は性欲が低いと言われています」と説明するのは、メンズヘルスクリニックManualのメディカルディレクター、アーリム・チャウドリ医師。「“その気”になれず悩んでいる人は意外と多いですよ」
セクシュアルヘルス専門の美容外科クリニックElite AestheticsおよびThe Cranley Clinicのシリン・ラカニ医師によると、45歳以上の男性の10人に4人はテストステロンの量が少ない。テストステロンの不足は、性欲減退に関係している。
男性の性欲が減退する理由
男性およびペニス所有者の性欲が低下する要因はさまざまで、身体的なものもあれば心理的なものもある。
1．心理状態
シェールによると、うつ病・ストレス・不安はどれも、性欲減退のよくある要因。「精神疾患は脳と性器のコミュニケーションを阻害します。うつ病と不安にいたっては、一部の脳内化学物質（ドーパミンやセロトニンなど）の機能を変えてしまいます。このような化学物質の多くは私たちの性反応に強く関係しているため、結果的に性欲が影響を受けることもあるでしょう」
また、性的虐待を受けたことがある人は、あとになって性欲の減退を感じることがある。「トラウマ的な経験を抑制しようとしてきた人はとくに、その傾向が強いですね」とシェールは続ける。性的なパフォーマンスに対する自信のなさも、性欲の減退を引き起こすことがあるそう。
そして、早漏や勃起不全といった性機能障害も性欲低下の要因になる。「その裏には大抵、性機能障害を抱える自分が情けないとか恥ずかしいといった気持ちがあります」とシェール。「その点、自尊心が低い人は性欲が下がりやすいと言えるでしょう」
2．人間関係
パートナーと仲直りしておらず、2人の間に張り詰めた空気が流れているときは、それが性欲の低下となって現れることもある。「その意味で性欲の低下は、感情的な安定や親密さを求める体の声と言えますね」とシェール。
「性欲の低下は人間関係のもつれに乗じて起こることが多いです。また、性機能障害が原因で、2人の間に新しい問題が生じてしまうこともあります」
3．生活状況
ラカニ医師によると、そのときの生活状況も性欲に影響を与える。「ストレスが非常に多い時期、仕事でひどく疲れているとき、赤ちゃんが生まれたばかりのときなどは、性欲が低下するかもしれません」
4．テストステロン不足
「年齢やほかのことが原因で体が十分なテストステロンを産生していない場合は、性欲が低下するかもしれません」とチャウドリ医師。この場合は「疲労、気分の落ち込み、筋量の減少といったほかの症状が付随する可能性もありますね」
5．食生活と飲酒
チャウドリ医師いわく「体重過多と不摂生」は性欲の敵。「油っぽい食べものとアルコールの過剰摂取は循環器系の健康に悪影響を与え、結果的に勃起不全や性欲低下のリスクを高めます。不健康な食生活は勃起不全の治療の成功を妨げることもあります」
心臓病や糖尿病といった重大な疾患がある人も、性欲が低下するかもしれない。
6．年齢
ラカニ医師が言うように、性欲は年と共に変動するもの。「男性のテストステロン値は10代後半でもっとも高くなります。その時期は性欲もピークに達して、そこから年と共に少しずつ低下します」
減退のスピードは人によって異なるけれど、男性およびペニス所有者の大半は、60～70代でもある程度の性欲が残っているそう。
性欲減退の治療法
![man sitting on the bed with woman on the back]( "Man sitting on the bed with woman on the back")
1．テストステロン補充療法
チャウドリ医師によると、医師の診察と血液検査の結果、テストステロン値が低すぎると分かった場合はテストステロン補充療法が受けられる。
2．生活習慣の改善
生活習慣は病院へ行かなくても自分で少しずつ改善できる。「テストステロンの自宅療法はキッチンで始まります」とチャウドリ医師。「定期的な運動と栄養たっぷりでバランスのよい食生活は、体の性反応を支える心臓の健康に欠かせません。フルーツ、野菜、全粒穀物が豊富で低糖質の食事を心がけ、脂肪の少ないタンパク質（鶏肉や魚）を控えめに摂取しましょう」
3．サプリメントの服用
チャウドリ医師によると、サプリメントで精子の産生を促すのは実際のところ名案（精子の産生自体が勃起に一役買っているため）。「マカ、朝鮮人参、亜鉛が豊富なサプリメントは、テストステロン値の低下を防ぐうえで役に立つかもしれません」。亜鉛不足の人は亜鉛のサプリメントでテストステロン値の向上が見込めるかも。
性欲減退が精神面に与える影響
シェールによると、世の中に「性欲＝男らしさ」という性差別的な固定観念があるせいで、性欲の減退は男性およびペニス所有者に“深刻な二次被害”を与えてしまうことがある。「性欲の低下はうつ病によって引き起こされることが多いですが、逆に性欲の低下がうつ病のような精神疾患を引き起こすこともあります。この悪循環に陥ると、抜け出すのが本当に大変です」
パートナーと話し合うには
パートナーの性欲が下がっているときは、ついそれを悪く取ってパートナーに「飽きられた」と思ってしまう。でも、性欲の低下には考えられる要因が山ほどあるので、それが事実とは限らない。
「この場合は、不安定な心理状態がパートナーの体に出ていると思いましょう。これを機に、あなたとパートナーの関係性を見直して、より安全で親密な関係を築く方法を見つけてください」とシェール。
「デリケートな問題を話し合うときは、パートナーの立場に立って、パートナーがいまどんな気持ちでいるのかを考えることが大切です。性欲の低下は大きなダメージになることもありますが、2人で力を合わせれば、ほぼ確実に乗り切れる問題です」
このような会話では感情的になりやすいので、シェールが言うようにセックスカウンセラーの助けを借りることも検討しよう。
Text: Medically reviewed by Dr Juliet McGrattan (MBChB) and words by Paisley Gilmour Translation: Ai Igamoto
