最近よく聞く「腟トレ」という言葉。腟トレをすることで骨盤底筋が鍛えられ、おなか周りがすっきりし、尿漏れなども改善するのだとか。今回は初心者向けの膣トレの正しい知識とトレーニング法、膣トレグッズ「インナーボール」のオススメと使い方などを詳しくご紹介。教えてくれたのは、 約20年以上前から世界中の膣トレグッズを日本に紹介してきたフェムテック専門会社「アジュマ」の山本さん。実は女性にとってメリットばかりの膣トレ! ぜひ試して欲しい。
【目次】
- 膣トレ(膣トレーニング)とは?
- 初心者でもカンタンな膣トレ方法
- 膣に入れる膣トレグッズ「インナーボール」
- 【初心者向け】おすすめの膣トレグッズ
- 膣に入れないタイプの膣トレグッズ
- インナーボール使用時にあると便利なアイテム
- まとめ
腟トレ(腟トレーニング)とは?
腟トレとは
「膣トレとは膣トレーニングの略で、股の部分を恥骨から尾てい骨にかけて走っている筋肉、骨盤底筋を鍛えることです。尿を止める、肛門を締めるなどの動きをするとその筋肉を意識することができます。最近ではヨガでも骨盤底筋を鍛える運動をすることがあるので、耳にしたことがある方も多いと思います。膣トレのルーツは諸説ありますが、江戸時代にあるとも言われています。花魁の方たちが膣の中にボールを入れて、膣を締める練習をしていたのが始まり。海外で膣トレボールのことを“ゲイシャボール”と呼ぶのは、このためなんです」(アジュマ山本さん)
腟が緩くなる原因
出産や加齢が主な原因?
骨盤底筋が緩んだり縮んだりして機能が低下する主な原因は、出産や加齢。でも、毎日積み重ねている生活習慣の中にも衰えを加速させてしまう要因が隠れていると言うのは、骨盤底と骨盤底筋の重要性を広くレクチャーしている、女性医療クリニックLUNA理事長の関口由紀先生。普段は、LUNA骨盤トータルサポートクリニックで診療にあたる。
骨盤底とは、膀胱や尿道、子宮などの臓器を下から支えている筋肉や靱帯の分厚い層のこと。この骨盤底を構成する筋肉が骨盤底筋。
「骨盤底筋を傷める原因の一つと言われているのが、腹圧をかける動作です。便秘がちでトイレで力んだりすると、骨盤底に必要以上に圧がかかります。ぜんそくなどのひどく咳き込む動作も、骨盤底に圧をかけます。また重たい荷物を持つ動作、体重過多も骨盤底筋に余計な力を加えてしまうので、傷つきやすくなってしまいます」
そんな簡単な動作でも骨盤底筋は弱ってしまうの? と思った人も多いはず。
「骨盤底筋は正確には骨盤底筋群といって、骨盤内臓器の支持と排泄を司る骨盤底プレートの重要な要素です。筋肉がいい状態で機能していれば、多少の腹圧がかかっても筋肉の柔軟性で対処ができます。ところが、骨盤底筋は意識しないと鍛えられません。現代人は歩かない、階段の上り下りもあまりしない生活。慢性的な運動不足で、デスクワークばかりの人が多い。骨盤底筋は膣や肛門、尿道をキュッと締めたり緩めたりすることができる筋肉でもあるのですが、運動不足や出産、加齢で骨盤底筋が傷むと、この動作が上手にできなくなってきます。例えば重たい荷物を持つときに骨盤底筋をキュッと締めて持てば、負担はかかりにくいのですが、無防備に持ってしまうため腹圧に負荷がかかり、それが骨盤底筋にも影響が出てしまうのです」
他にも、こんな生活習慣が骨盤底筋に影響する。
・だらしなく座る
骨盤をはじめ、姿勢が崩れることで腹圧に負担がかかってしまう
・起き上がる腹筋運動
上体を起こす腹筋運動は、高い腹圧をかけるので勧められない
・反り腰
腰を反ると高い腹圧がかかる。パンプスは反り腰になりやすくなるので要注意
・猫背
不安定な上体を支えるために、不要な腹圧がかかってしまう
まずは、骨盤底筋が弱まる生活をしていないかを確認してみよう!
参考記事:膣トレに向けて。あなたは大丈夫!? 骨盤底筋が緩んでしまう生活習慣
腟トレの効果
「腟トレのメリットとしては、体感を高める、オーガズムを感じやすくなる、男性に緩いと言われなくなるなど、セックスありきの効能がうたわれがち。ですが、骨盤底筋は尿道や膣、肛門など、排泄に関わる、女性にとって大切な部分を走っている筋肉なので、ここを鍛えることで、尿モレや便秘解消にもよいことに注目していただきたいですね。また、冷え性やむくみ、下腹部のシェイプアップにも有効だと思います。膣トレというと、パートナーがいる人だけがするものと思っている方も多いようですが、実は自分の体の健康のためにおすすめしたいことです。ぜひ普段のトレーニングの延長でおこなっていただきたいです」(アジュマ山本さん)
初心者でもカンタンな腟トレ方法
ここでは、婦人科医でイーク表参道副院長の高尾美穂先生に教えてもらった、グッズを使わずにできる膣トレ方法をご紹介。
トイレを我慢する要領。骨盤底筋にも力を入れた「ヒップリフト」
1 仰向けに寝て、膝を立てる。膝は閉じておく。
2 ゆっくりと床からヒップを持ち上げる。このとき、トイレを我慢する要領で、骨盤周りにキュッと力を入れながら行うのがポイント。
3 へそから膝まで一直線になる程度まで、お尻をアップして5秒間キープ。これを20回を目標に繰り返す。
仕事中でも実践! デスクでも内緒でできる「内転筋トレーニング」
1 いすに座り、背筋を伸ばす。深く座ると姿勢が丸くなるので、深く座りすぎないのがポイント。骨盤をしっかり立てて座る。
2 脚をそろえ、太ももの間にクッションや丸めたバスタオルなどを挟んでキープする。このときにおなかに力を入れ、トイレを我慢するようにキュッと骨盤底筋に力を入れる。難しい場合は、肛門を締めるようにしてもOK。長くキープできるようなら5分を目標に。5分間キープできない場合は、少しずつ時間を伸ばすことを目標に。
参考記事:普段の運動では鍛えにくい! 医師が教える「骨盤底筋のケアメソッド」
腟に入れる腟トレグッズ「インナーボール」
ここからは、アジュマの山本さんに教えてもらった、グッズを使って腟を鍛える方法を紹介していく。
インナーボールとは
「腟トレに使うグッズは、機能や形状で分けると、大きく4つ(ボール型・スマホ連動トレーニング型・バイブレーショントレーニング型・セルフプレジャーの一体型)に分かれます。いちばん王道なのが、ボール型のインナーボール。ケーゲルボールやゲイシャボールとも呼ばれています。腟の中にこのグッズを入れて日常生活を送るだけで、シリコンの中に入っているボールがコロコロと転がり、腟を刺激してトレーニング効果が手に入ります」
インナーボールの効果
「スクワットをしたり、運動をしたりなど、インナーボールを使わない膣トレも人気ですが、初心者にでも簡単にできるのはやはりグッズを使う方です。骨盤底筋や膣に力を入れる動作は慣れていないと難しいもの。でも、膣にインナーボールを入れた状態だとそれが簡単に意識できるようになるんです」
インナーボールについている機能
EMS機能
「腟トレグッズを入れて、日常生活を送るだけで、勝手にトレーニングになります。体の筋トレで言うと、EMSトレーニングのようなイメージ。激しい運動などをしないでも、パッドを貼っているだけで自分の意思とは関係なく、電気刺激で筋肉トレーニングができる。このような“ながらトレーニング”です」
バイブレーション機能
「最近の腟トレグッズの中にはバイブレーション機能が付いているものも多いので、セルフプレジャーと膣トレの違いを聞かれることが多いです。バイブレーション機能が付いているグッズは、膣トレに加えて、ローターとしても使えるように良かれと思ってメーカー側が振動機能も付け加えたもの。バイブレーション機能が締める・緩めるの合図になっているグッズもありますが、基本的にはセルフプレジャーとはまったく別のことです」
ダンベル機能・膣圧測定ができる機能
「グッズを入れて、5分程度の決まった時間、自らの意思で膣を締める・緩めるの運動をします。まさにダンベルでの筋トレのような感じです。こちらで使うグッズは多くの場合、スマホと連動して使うものが多く、専用アプリの指示に従って膣を締めたり、緩めたりします」
インナーボールの使い方
インナーボール使用方法と注意点
「タンポンを入れる要領で奥まで完全に入れます。違和感があるときはきちんと入っていないとき。いい位置に入っていたら、歩いたりしても落ちてくることはありません。クッションやまくらで腰を支えるように椅子に座ってみる or 仰向けに寝てみる、などリラックスした自分が入れやすいポーズが大事です。上手く入らない……というときは、ローションを使いましょう! ローションが膣内でクッションの役割を果たし、トレーニングボールをいい位置に運んでくれます。押し込まなくてもするっと入るから、余計な力で膣内を傷つける心配もありません」
インナーボールのお手入れについて
「使用前はぬるま湯・水洗いでほこりなどを落とし、使用後は石けんなどで、しっかりと洗いましょう。ただし、石けんが残らないように十分洗い流すようにしてください。石けんカスなどは膣内トラブルの元になります。使用後はバイブクリーナーを使うとより安心です。とくにシリコンはぷにぷにしているので、どうしてもゴミがつきやすくなっています。しっかり洗って清潔に!」
【初心者向け】おすすめの膣トレグッズ
①プレイボール
プレイボールは重さの違う4つのボールを組み合わせて使う、骨盤底筋トレーニングボール。ヒモの部分にボールをすぽっと、はめ込んで使う。自分の体調やレベルにあわせて、重さを自由にカスタマイズできるのがGOOD!
②Je Joue AMI ケーゲルボール
最高級プレミアムシリコンでやさしい肌触りを実現した、ロンドン発の骨盤底筋トレーニンググッズ。3サイズでワンセットだから、ライフスタイルにあわせ、トレーニング効果を実感できる。
③エルビー
見える形で成果を知りたいという声を受けて生まれた、スマホ連動トレーニング型の「エルビー」。膣に入れる本体の部分に繊細なセンサーが入っていて、専用のスマホアプリと接続することで、自分の膣圧を計測してくれる。また、その日の自分の膣圧によって、自分に合ったベストなトレーニングを専用のアプリが提案してくれるから、効率がよい。トレーニングといっても、膣を締める、緩めるという動きをゲーム感覚で楽しめるので、無理なく続けていけると大人気。
④EMIGI ラブパール シングル
アジア人女性の身体にあったサイズで、挿入に慣れていない人でも使いやすいサイズ。そのまま、入れたまま普通に生活することで、ラブパールの中に入っているボールが、コロコロと転がり、膣を刺激する。
⑤レロ ルナスマートビード
こちらも自分で膣を締めたり、緩めたりするエクササイズ系。ブルブルと震えるバイブレーションに合わせて、トレーニングしていく。本体が膣内でバイブしたら膣を締め、振動が止まったら膣を緩める。さらに、このスマートビートは本体の膣内にセンサーが入っており、入れることで膣内の状態を計測できる。自動でトレーニングメニューを調整してくれる。
⑥アネロス ヴィヴィ
膣トレとセルフプレジャーの両方がひとつでできる一体型のグッズ。このVIVIはぷっくりとした卵型の部分を膣に挿入し、わん曲した部分がクリトリスに当たるように使う。膣に挿入する部分が特殊な形状をしているため、本体を入れ、膣を締める・緩める運動をすると膣を刺激し、トレーニングになる。さらにスマホアプリと連動させると、グッズを振動させエクササイズする「膣トレモード」も。セルフプレジャーとしては、膣に挿入する卵型部分がGスポットを刺激、わん曲部分はクリトリスを刺激。膣の中と外を同時に刺激できるため、オーガズムを得やすいのが特徴だ。
膣に入れないタイプの膣トレグッズ
座って使うクッションタイプ
メンダイ 骨盤底筋 モレトレ美クス
骨盤底筋、肛門括約筋を鍛える運動ができるクッション。底は船底型の不安定な形状で、座ると自然に骨盤底筋が意識するため力が入る。腹筋、背筋などの体幹部分の筋肉も同時に鍛えられる!
太ももに挟んでトレーニングするタイプ
HARUTA式 骨盤底筋キュキュトレーナー
膣へ挿入せずに、太ももの付け根に挟み込むようにして静止することで、骨盤底筋を刺激するアイテム。テレワークの人におすすめ!
インナーボール使用時にあると便利なアイテム
デリケートゾーンを守ってくれる潤滑油
インティメイト・ウォーターローション/イエス
挿入時や外す際に膣にローションをするとスムーズに着脱できるのでおすすめ。「イエス」のインティメイト・ウォーターローションは、サラサラとした自然なテクスチャー。水をたっぷり使ったローションだから、使い心地が水のようにサッパリしている。女性の体を真面目に考えた「イエス」製品で人気No.1のローション。イギリスでは、病院や薬局で取り扱われている。
グッズのお手入れをするクリーナー
イロハ アイテムクリーナー
膣トレを安心して行うためには、アイテムの除菌ケアも大切なこと。「イロハ」のアイテムクリーナーは、ふんわり泡で、ひと拭き除菌。デリケートゾーンと同じ弱酸性でできているから、膣トレの前後を選ばず使用できる。
アンチバクテリアルトイクリーニングスプレー/レロ
99.9%殺菌をする抗菌成分が含まれているうえに、pHバランスのとれた、LELOの抗菌洗浄スプレー。 使い方は、グッズの表面にスプレーをし、5秒間待った後、糸くずの出ない布やタオルで拭き取って。シリコン、ゴム、ラテックス製のトイの使用に適している。
まとめ
今回は初心者向けの膣トレの正しい知識とトレーニング法、膣トレグッズ「インナーボール」のおすすめをご紹介。膣トレは、おなか周りがすっきりし、尿漏れを改善に導いてくれそう。悩んでいたら、早めにケアしていこう!
お話を伺ったのは… アジュマ 広報担当 山本綾乃さん
1996年に創業したフェムテック専門会社「アジュマ」の広報担当。フェムテック・セクシュアルヘルス業界で働いて今年で6年目。女性たちが自由に楽しく生き、性によって貶められることの無い安心できる社会を目指して仕事に取り組んでいる。アジュマでは、日本で最初に女性だけで始めたセックストイグッズを扱うオンラインショップ「LOVE PIECE CLUB」の運営もしている。
Text: Kanako Takahashi